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「生意気な…」と
 言われた記憶。

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手がけたお酒はすべて
自分の子供のようなもの

山賀 基良

杜氏

私が入社したばかりの時には、当時工場長だった嶋先生(元新潟県醸造試験場長)がいらっしゃいました。私が担当していた麹を触って、これはちょっと柔らかすぎるとか、硬すぎるとか、「これはおにぎりと言うんだよ、麹とは言わない。」とか言われたりもしましたね。そういう時は緊張しました。「これじゃダメだ、もう一回やり直せ」と言われ、麹の温度が下がらないように室温を40度くらいまで上げて、もう一回麹を広げて、乾かしなおしました。褒められたことはなかったですが、会社の発表会があったときに、その最後に「酒造りをしっかりできるようになりたい。技術を高めたい、嶋先生のような麹を見る目を養いたい。」と言ったんです。その頃、嶋先生は取締役となっていましたが、最後の講評のときに「生意気な…」と言われましたね(笑)。それが印象にのこっています。当時と今では造っているお酒が
違いますし、今の自分はこうするという部分ももちろんありますけど、今でも麹を触るたびに嶋先生ならどう思われたのかなと考えます。
自分の仕事を一言で説明するなら、オーケストラの指揮者みたいなものでしょうか。各工程の担当者に指示を出しながら、全体のハーモニーを奏でるという点では同じかなと思います。そんななかで、もっと良いものを造りたいとチャレンジしているときって楽しいもんです。そして造り手のみんなが大変な仕事のなかにも楽しんで仕事をしなければいい酒はできません。ですから、あまり細かい指示はせず、各担当がよりよいものを目指して試行錯誤することで良い酒ができると思っています。
私が入社したばかりの時には、当時工場長だった嶋先生(元新潟県醸造試験場長)がいらっしゃいました。私が担当していた麹を触って、これはちょっと柔らかすぎるとか、硬すぎるとか、「これはおにぎりと言うんだよ、麹とは言わない。」とか言われたりもしましたね。そういう時は緊張しました。「これじゃダメだ、もう一回やり直せ」と言われ、麹の温度が下がらないように室温を40度くらいまで上げて、もう一回麹を広げて、乾かしなおしました。褒められたことはなかったですが、会社の発表会があったときに、その最後に「酒造りをしっかりできるようになりたい。技術を高めたい、嶋先生のような麹を見る目を養いたい。」と言ったんです。その頃、嶋先生は取締役となっていましたが、最後の講評のときに「生意気な…」と言われましたね(笑)。それが印象にのこっています。当時と今では造っているお酒が違いますし、今の自分はこうするという部分ももちろんありますけど、今でも麹を触るたびに嶋先生ならどう思われたのかなと考えます。
自分の仕事を一言で説明するなら、オーケストラの指揮者みたいなものでしょうか。各工程の担当者に指示を出しながら、全体のハーモニーを奏でるという点では同じかなと思います。そんななかで、もっと良いものを造りたいとチャレンジしているときって楽しいもんです。そして造り手のみんなが大変な仕事のなかにも楽しんで仕事をしなければいい酒はできません。ですから、あまり細かい指示はせず、各担当がよりよいものを目指して試行錯誤することで良い酒ができると思っています。
一般に、日本酒は芸術作品に近いイメージを持たれやすいですよね。もしかしたら、おいしいお酒は自然の恵みの中から偶然に生まれる、と思っている方も多いかもしれません。しかし私は、この味と決めたものを常に同じように造ることができる、というのが酒造りの技術だと考えています。言い換えればそれは、自然のように移ろいやすいものに頼りきりになるのではなく、常に自分たちのベストを尽くせる環境を整えておく、ということでもあります。ひょっとすると残念に思われる方もいるかもしれませんが、高級な酒だからといって特別に力
を入れて造っている、という訳ではないんですよ。どこか手を抜いて成立する仕事ではありませんし、私にとっては、手がけたお酒はすべてが自分の子供のようなものなんです。
力を出し切って真心を込めた酒とそうでない酒の味を比べても、違いはそこまではっきりと分からないかもしれません。けれど、それでもそこにほんの少しでも違いがあるんだと信じ、決して妥協しないこと。それが私たちの仕事であり、責任なのだと思っています。
一般に、日本酒は芸術作品に近いイメージを持たれやすいですよね。もしかしたら、おいしいお酒は自然の恵みの中から偶然に生まれる、と思っている方も多いかもしれません。しかし私は、この味と決めたものを常に同じように造ることができる、というのが酒造りの技術だと考えています。言い換えればそれは、自然のように移ろいやすいものに頼りきりになるのではなく、常に自分たちのベストを尽くせる環境を整えておく、ということでもあります。ひょっとすると残念に思われる方もいるかもしれませんが、高級な酒だからといって特別に力を入れて造っている、という訳ではないんですよ。どこか手を抜いて成立する仕事ではありませんし、私にとっては、手がけたお酒はすべてが自分の子供のようなものなんです。
力を出し切って真心を込めた酒とそうでない酒の味を比べても、違いはそこまではっきりと分からないかもしれません。けれど、それでもそこにほんの少しでも違いがあるんだと信じ、決して妥協しないこと。それが私たちの仕事であり、責任なのだと思っています。

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